失恋と音楽 4

失恋と音楽 4

 同じく20代の半ば、恋愛対象というより、憧れの年上女性が僕には存在した。美人というよりは、細面で可愛らしくて、どこか儚げなムード漂う佇まい。軽い方言が耳に心地よい。いま気づいたが、僕が好きになるのは共通してこういうタイプの人だ。自分の見てくれなど顧みず、しかし当時の僕は体重55㌔程度、今ほど不釣り合いじゃなかったかもしれんが。

 地方の国立大学を卒業した、当時27歳の既婚者。旦那さんはバリバリの営業マンで、一度ご挨拶したことがある。大学で知り合った、同い年の方じゃなかったか。彼女は「○○君」と、自分のパートナーを友達のように呼んでいた。

 一般の方に理解し難いかもしれないが、彼女は結婚していることに、大きな引け目を感じていた。自分だけが幸せでいることに、罪悪感すら抱いていたようだ。旦那さんはいたって常識人だったから、ギャップは更に広がっていただろう。僕の周囲にいたのは、どちらかといえば世間からドロップアウトした人ばかりだったので。「普通」でいることが却って目立ってしまうという、思い返せばヘンな環境だったのだ。

 重度障害の女性が独り暮らしを始めるにあたり、彼女が専従介護者になった。僕ものちにこの方の介護に参加し、キヨコさんと顔見知りになる。淡い想いは、顔を背けながらもほのかに募っていたかもしれない。

 1985年(昭和60年)8月12日 午後7時。

 運命のその日、夕飯はキヨコさんが作ったカレーライス。3人でちゃぶ台を囲みながら、なんでもない日常の話題に花を咲かせていた時だった。

https://www.youtube.com/watch?v=Go6uvR8LCnI



唐草模様の心象風景
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